怪奇さん

ありとあらゆるホラーの溜まり場。



細い腕

小学生の頃、うちは子供部屋が二階で、弟と共有、シングルベッドを横に二つ並べて寝ている部屋だった。


夜、僕らのところに両親はよく、いたずら(驚かし)にくる。しかし、大抵、階段を登るときの足音で部屋に近づいてくることに察しがつく。


そして、大体、足音が聴こえると、弟に「来たよ」と話しかけ、迎え撃つ準備をする。そして、まんまと驚かしを喰らわないよう、ベッドから降り、自分たちが隠れるとかの策を打ち、逆に両親を驚かすなどのありふれた戯れをしていた。


ある日の夜、いつものようにベッドに寝ていると、ベッドの下から手が出てきた。


僕は「また来たよ」と思い、その手を掴み、引っ張った。

しかし、手はびくともしない。足音もしなかったし、第一、狭いベッドの隙間にどうやって両親が入ったのか……。


そのとき、僕は少しの不気味さを感じた。


僕は手を掴んだまま横に寝ている弟を起こした。


僕「起きろ!この手引っ張るぞw」


弟が腕を掴む。流石に、2人でかかれば動くだろう。そう思っていたのだが、びくともしない。


……おかしい。


今日、親父は出張でいないはずだ、なら、この腕は確実に母なのだ。


掴んだ時からあったいつもと違う感覚。


弟「腕細くね?」


掴んだときにあった、いつもと違った感覚。

そう、母の腕はちょっと太ましく、父の腕なら毛がある。だが、この腕は細くツルツルなのだった。


いくら引っ張ってもびくともしないので僕は弟に灯りをつけに行かせた。モノの数秒、弟が手を離した瞬間に、僕の腕は強い力で掴まれた。


そして、引っ張られた。痛みを感じた。


当然、それに理解が追いつかないまま、弟が灯りをつける。直後、手が離される。


明るくなった部屋で、僕らはベッドの下を覗いた。ベッドの下には埃があるだけだった。


その間、部屋の扉は締まったまま、部屋を出る者、階段を下りる足音はなかった。


痛みが残ったまま、クローゼットの中など、部屋の隅々を隈なく、数十分程探したが、僕ら兄弟以外は部屋に誰もおらず、訳がわからなかった。


そのため、ひとまず眠りについた。翌朝、母に昨夜の出来事を僕らは話した。当然、母は信じるはずもなく、父は出張で家にいるはずもなかった。


晩のことを気にしながら、僕らは学校に登校した。その日の2時間目の授業が終わったあと、先生から呼び出しを受け、学校を早退した。


入院中の叔母ちゃんの容体が悪化したらしい。その数日後、叔母ちゃんはこの世を去った。

あの腕は結局誰の腕だったのか、今でも僕はあの日のことを覚えている。



*TwitterにてKeiA@新曲投稿(@Keiaharehare)さんから頂いたお話です。